
越境ECで売れる商材とは?

経済産業省の調査(※1)によると、世界のBtoCにおける越境ECの市場規模は2014年に2,330億USドルでしたが、2020年には9,940億USドルに拡大すると予測されています。6年で4倍以上という急速な拡大が見込まれている背景には、パソコンやスマートフォーンの普及によりインターネット環境が整っていることや、海外製品でも安心・簡単に取引できるオンラインショッピングモールや決済方法が確立してきていることが考えられます。
今回は、これからも拡大を続けると予測される越境EC市場でどのような商材が売れる可能性があるのか見ていきましょう。
サクッと理解!本記事の要点まとめ
越境ECとインバウンド(訪日観光)は、なぜ関係が深いのですか?
日本旅行中に気に入った商品を、帰国後に越境ECでリピート購入する消費者が多いためです。訪日時の体験が、帰国後のオンライン購入に直結しています。
越境ECでは、具体的にどのような日本の商品が人気ですか?
特に「美容コスメ」「アパレル」が人気です。その他、高品質な「家庭用電化製品」、独自の文化である「マンガ・アニメ関連商品」、状態の良い「中古ブランド品」などもよく売れています。
海外の消費者は、なぜわざわざ日本のECサイトで商品を買うのでしょうか?
「自国では手に入らない」という希少性に加え、「正規品が買える」という品質への信頼が大きな理由です。安心して購入できることが、海外からの注文につながっています。
海外向けに商品を売るには、どのようなマーケティングが重要ですか?
検索エンジン対策以上に「SNSの活用」が重要です。企業の広告よりも一般ユーザーの口コミが信頼されやすいため、SNSでのファン作りや信頼関係の構築が鍵を握ります。
越境ECで成功するには、どのような視点を持つと良いですか?
「日本では当たり前」の価値が、海外では大きな強みになるという視点です。「正規品であること」や「中古品の状態の良さ」など、海外の消費者が求める価値を見極めることが重要です。
越境ECとインバウンド消費の関係
越境ECで売れる商材はインバウンド消費と大きな関係があると考えられています。
外国人観光客が日本で購入した商品を気に入り、自国でリピート購入するユーザーがいるためです。
これは経済産業省による『令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』(※1)の中の、越境ECの利用意向の調査では、外国旅行中に気に入って購入した現地の商品やブランドを、帰国後に越境ECで再度購入した経験者は44.0%でした。 さらに、越境ECで再度購入した理由としては、「自国で買えないため」(60.0%)、「ブランドやショップのファンになった」(45.6%)、「商品が気に入った」(39.9%)という回答が多数を占めていました。(※2)。さらに日本で購入した商品の良さが広がることで多くのユーザーの購買意欲が促進され、越境ECでより売れる商材となる可能性もあります。
近年越境ECで売れている商品とインバウンド消費の両方から考えることで、越境ECで売れる商材が見えてきます。

越境ECで売れる商材
越境ECで売れる商材やユーザーが購入する理由は、地域や国によって異なります。
美容コスメ商品
経済産業省の『令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』(※2)の報告によると、中国人が越境ECを利用して購入したい日本の商品のトップは「美容コスメ」で44%でした。
また、観光庁が2024年に出した訪日外国人の消費動向の中の買い物ランキング(※3)では、中国、香港などの国で「美容コスメ」がトップ3以内にランクインしており、その他の多くの国でもトップ5にランクインする人気となっていました。
美容コスメに限りませんが、中国人消費者が越境ECを利用する理由は「国内にないものを購入できる」52%、「正規品等、信頼できる先から購入できる」44%、「高品質である」41%などの結果となっており、中国はEC市場以外の小売市場でも偽物や粗悪品が出回っているため、正規品や品質の高い製品を安心して購入できることは購買を決定する大きな動機になっています。
中国の越境ECのユーザーは女性が約7割以上ともいわれているため、化粧品のような女性の興味をひく商材は拡販が見込めます。 また、SNSの使用率が高いユーザー層も多いため、口コミの拡散による宣伝効果も期待できると思われます。
アパレル商品
さらに、経済産業省の調査によると、「美容コスメ」に続いて購入したいと思われている商品は「衣料品/アパレル」で43%でした。
観光庁が出した訪日外国人の買い物ランキングでも、美容コスメ同様、「衣料品/アパレル」の分野は高い割合でトップ3にランクインしており、イタリア、フランス、ドイツ、スペイン等ヨーロッパ各国では1位を獲得するなど、日本のファッションの人気が高いことがわかります。
また、開発途上にあるアジアの国々でもEC市場規模は急速に拡大しているため、今後、越境ECを使ったアパレル商材の取引はより活発に行われると考えられます。
マンガ、アニメ、キャラクター関連商品
その他マンガやアニメ、キャラクター関連商品の購入が、イギリス・ドイツ・フランス・スペインなどのヨーロッパ各国や、アメリカなどの海外で一定の人気があります。
マンガやアニメ、キャラクター関連商品は、現地では日本より高値で取引されることもあるため、越境ECを利用して購入するユーザーも多いのが現状です。
家庭用電化製品
品質、機能、耐久性に優れた日本の電化製品は、越境ECで高い人気を誇ります。観光庁の調査でも、訪日客による電気製品の購入率は台湾(8.6%)、中国(7.9%)で特に高く、アジア圏で強く支持されていることがわかります。
では、海外の消費者はどのようにして商品を見つけているのでしょうか。経済産業省の調査によると、そのきっかけのトップは「SNS広告」(65%)です。この背景には、特に中国のEC市場が抱える課題が関係しています。中国では偽物や誇大広告が後を絶たず、消費者は企業が発信する情報よりも、SNS上の一般ユーザーによるリアルな評価や口コミを信頼する傾向にあるのです。
日本では「正規品」や「説明通りの品質」は当たり前ですが、その“当たり前”が通用しない市場があるからこそ、品質に厚い信頼が寄せられる日本製品は大きな強みを持っています。
こうした状況を踏まえると、日本製品は今後も越境ECで注目され続けると予想されます。そのため日本企業にとっては、従来の検索エンジン対策以上に、SNSを通じた信頼関係の構築や、口コミを促すマーケティング戦略が不可欠と言えるでしょう。
中古品
中古のブランド品も欧米やアジア各国で一定の需要があります。中古品というと海外では状態の悪い商品も多いですが、日本の中古ブランドは状態の良いものが多く、信頼されていることが人気の理由です。
「MADE IN JAPAN」は海外で人気ですが、「日本人向けに販売されたもの」「日本人が使っていたもの」というだけでも海外ユーザーに評価されていることが分かります。
海外ユーザーが求める商材は何か
外国人ユーザーが越境ECを使って買い物をする理由は、自国にはない商品だったり自国の品質では不安だったり、自国で買うより価格が安かったりとさまざまです。
国や商材によっても利用する理由は異なりますが、いずれの場合も、ユーザーは他国で購入することに価値があると考えているため、越境ECを使って取引がされています。
一見「日本では売れない」「日本では一般的」と思うような商材でも、海外では受け入れられる可能性が大いにあるので、インバウンド消費の動向を読んだり海外ユーザーの視点に立って考えたりしながら、求められている商材を取り入れることを検討してみましょう。
参考
(※1)『令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005-a.pdf
(※2)『令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書』https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002-1.pdf
(※3)『訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2024年 年次報告書』https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001884192.pdf

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